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Column ・ 宇宙のはなし

50年ぶりに、人類は月をめざす。
──アルテミス計画と「月の歴史」入門

ニュースでよく見る「アルテミス」。アポロ以来およそ半世紀ぶりの月への挑戦を、宇宙にくわしくない人にもやさしく。

宇宙のはなし2026.06.17読了 約5分

2026年4月、4人の宇宙飛行士を乗せた宇宙船が月をぐるりと回って地球に帰ってきました。人類が月の近くまで有人で飛んだのは、じつに約50年ぶり。いま世界は、もう一度月をめざしています。その主役が「アルテミス計画」です。難しそうに聞こえますが、ポイントを押さえればワクワクする話。順番に見ていきましょう。

まずは「アポロの時代」から

人類が初めて月に降り立ったのは1969年7月20日。アポロ11号のニール・アームストロング船長とバズ・オルドリン飛行士でした。以後1972年までに、アポロ計画では合計6回の月面着陸が成功し、12人の宇宙飛行士が月を歩いています。最後に月面に立ったのは1972年・アポロ17号のクルー。つまり、いま生きているほとんどの人にとって「月を歩いた人」はもう半世紀も現れていないのです。

当時のアポロは、いわば「旗を立てて帰ってくる」挑戦でした。米ソの宇宙開発競争のなか、まず行って帰ることが最大の目的。着陸地点も、平らで着きやすい月の赤道近くが選ばれました。

豆知識①

「アルテミス(Artemis)」は、ギリシャ神話で太陽神アポロンの双子の妹であり、月の女神。前回の計画名「アポロ」の、妹の名前というわけです。粋なネーミングですね。

そして今、「アルテミス計画」

アルテミスは、NASAを中心に日本(JAXA)やヨーロッパ、カナダなどが協力して進める国際的な月探査計画です。進み方はこんな感じです。

当初はアルテミスIIIで着陸する予定でしたが、着陸船の開発を慎重に進めるため、実際の月面着陸はアルテミスIV(2028年)へと計画が見直されました。宇宙開発は「急がば回れ」。安全第一で一歩ずつ進んでいます。

豆知識②

アポロで月を歩いた12人は全員が男性でした。アルテミスIIに搭乗したクリスティーナ・コック飛行士は、月へ向かった史上初の女性。時代は変わりました。

アポロと、何がちがうの?

いちばんの違いは「目的」です。アポロが行って帰る挑戦だったのに対し、アルテミスは月に“住みつづける”ための土台づくり。月を一度きりの目的地ではなく、人類が暮らし、さらに火星へ向かうための「中継地点」にしようとしています。

だから着陸地点も変わりました。アポロの赤道付近ではなく、アルテミスがねらうのは月の南極。けわしくて影の多い、これまで人が行ったことのない場所です。なぜ、わざわざそんな難所へ? 答えは「水」にあります。

カギは、月の南極の「水」

月の南極には、太陽の光が一度も当たらない「永久影」と呼ばれるクレーター(くぼ地)があります。そこはマイナス150℃以下の極寒で、なんと何十億トンもの水(氷)が大昔から眠っていると考えられています。

宇宙では、この水が金より価値を持ちます。飲み水になり、植物を育て、さらに水素と酸素に分ければ、呼吸する空気とロケットの燃料になるからです。現地で水と燃料がまかなえれば、地球からすべてを運ばなくてよくなる。月での長期滞在も、火星への旅も、ぐっと現実的になります。

その拠点として、月のまわりを回る小さな宇宙ステーション「ゲートウェイ(Gateway)」も計画されています。通信の中継所であり、実験室であり、宇宙飛行士の一時的な滞在所。月面基地は2029〜2030年ごろに、南極付近で建設が始まる見込みです。

豆知識③

月の南極の氷は、はるか昔に彗星(すいせい)が運んできたと考えられています。冷たい影の中で、何百万年も解けずに残ってきた“宇宙からの贈り物”です。

つまり、月は「未来への入口」

アルテミスは、ただ月へ戻る計画ではありません。月で水を得て、燃料をつくり、人が暮らす。そして次は火星へ——。私たちは今、その壮大な物語のはじまりの数年間を生きています。夜空に見えるあの月が、数年後には「人が住む場所」になっているかもしれない。そう思うと、月を見上げる気持ちも少し変わってきませんか。

RODEN & SPACE

宇宙を、“遠い話”で終わらせない。

ローデンは、宇宙ミュージアム「ソラミル」の運営や、スペースポート高知への参画、宇宙食開発や「宇宙縁日」などのイベントを通じて、宇宙を身近なワクワクに変える取り組みを進めています。

このコラムでも、宇宙やロケット、そしてミライの話を、これからやさしくお届けしていきます。