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Column ・ 宇宙のはなし

宇宙にも、「ごみ問題」がある。
──スペースデブリと「宇宙のそうじ」入門

地球のまわりを、ものすごい速さで回りつづける“宇宙ごみ”。なぜ小さなかけらがこわいのか、そして日本が挑む「宇宙のそうじ」を、やさしく。

宇宙のはなし2026.07.27読了 約6分
📖 読み方を選べます。お子さまには こども版(ふりがな) がおすすめです。

スマホの地図、天気予報、テレビ中継。私たちの毎日は、じつは頭上を回るたくさんの人工衛星に支えられています。ところがいま、その宇宙が“混雑”し、ある問題が深刻になっています。それが「スペースデブリ(宇宙ごみ)」。役目を終えた衛星や、ロケットの部品が、捨てられないまま地球のまわりを回りつづけているのです。順番に見ていきましょう。

青い地球のまわりには、目に見えないたくさんの“宇宙ごみ”が回っています。※イメージ映像

宇宙は、思ったより「混んで」いる

地球のまわりを回る物体のうち、地上から追いかけて登録されているものだけで4万個以上そのなかで、いまも働いている衛星は1万機ほどで、残りの多くは“ごみ”です。さらに小さくて追いきれないものを推定で数えると、10cmより大きなかけらが約5万個、1cmより大きなものは約120万個1mmより大きなものにいたっては1億個をはるかに超えると見られています。宇宙にある人工物の総重量は、あわせて1万5千トン以上。

しかもこの数は、ここ数年で急に増えています。インターネット通信などのために、数千機をまとめて打ち上げる「大規模衛星群」が世界で広がっているからです。便利になる一方で、宇宙の“交通量”はかつてない水準になっています。

豆知識①

スペースデブリは、こわれた衛星やロケットの本体だけではありません。切りはなされた部品、過去の衝突や爆発で生じた破片、さらにはペンキのかけらやボルト1本まで——。宇宙では、それらすべてが立派な“ごみ”になります。

小さなかけらが、なぜこわいのか

ポイントは「速さ」です。地球のまわりを回るものは、およそ秒速7〜8km(時速にして約2万8千km)という、ライフルの弾の何倍もの速さで飛んでいます。この速さでは、たった1cmのかけらがぶつかっただけでも、衛星に手りゅう弾のような打撃を与え、機能を止めてしまうことがあります。

実際、国際宇宙ステーション(ISS)は、接近するデブリを避けるために、ときどき軌道をずらす操作を行っています。過去には、ほんの小さな破片がスペースシャトルの窓に当たり、ガラスに欠けあとを残したこともありました。宇宙では、ごみの“大きさ”より“速さ”がこわいのです。

宇宙から見た、青くかがやく地球の大気の層
宇宙から見た地球の大気の層。多くの衛星やデブリは、この薄い大気のすぐ上(地上数百km)を高速で回っています。画像:NASA
豆知識②

デブリ同士がぶつかると破片が増え、その破片がまた別の衛星にぶつかって、さらに破片が増える——。この連鎖が止まらなくなる状態を「ケスラーシンドローム」と呼びます。最悪の場合、特定の軌道が“使えない場所”になってしまう、と心配されています。

ほうっておくと、どうなる?

デブリの多い低い軌道では、衝突の危険度がこの数年で2割ほど高まったという報告もあります。もしケスラーシンドロームのような連鎖が起きれば、私たちが毎日使っている地図・天気・通信・放送の衛星が次々に使えなくなり、暮らしに直接ひびきます。

宇宙は、もはや“遠い空”ではなく、電気や水と同じように守るべき大切なインフラです。そして今、その環境をきれいに保つための取り組みが本格的に動き出しています。

「宇宙のそうじ屋さん」が、動き出した

対策は、大きく2つの方向で進んでいます。ひとつは「これ以上ごみを増やさない」こと。新しい衛星は、役目を終えたら自分で大気圏に落ちて燃えつきるよう設計され、宇宙に長く放置しないルールづくりが世界で進んでいます。

もうひとつが、すでにあるごみを実際に取りのぞく挑戦です。ここで世界の先頭を走っているのが、日本東京発の宇宙企業アストロスケールが、JAXAの実証計画(CRD2)のもとで、次のように歩みを進めています。

  • 2024年
    フェーズ1
    探査衛星「ADRAS-J」が、日本のロケットの上段(長さ約11m・重さ約3トンの“大物ごみ”)に、約15mまで接近。民間として世界一の近さで観測に成功しました。
  • 2025年
    ミッション完了
    約1年の運用を終え、安全な軌道へ。「どうやってごみに近づき、まわりを観察するか」という基本の技術を実証しました。
  • 2027年ごろ
    フェーズ2
    後継機「ADRAS-J2」が、同じロケット上段にロボットアームで“つかまえて”、大気圏へ落として処分する計画。実現すれば大きな一歩です。
豆知識③

低い軌道の衛星やデブリは、じつは少しずつ高度を下げ、最後は大気圏に飛びこんで燃えつきます。いわば“人工の流れ星”。問題は、自然には落ちてこない高い軌道や、大きなごみをどう片づけるか、なのです。

宇宙を、きれいなまま次の世代へ

宇宙は、だれか一人のものではなく、世界みんなで使う“共有の場所”です。使ったあとを片づけ、散らかさない。地上のごみ問題とまったく同じ発想が、いま宇宙でも始まっています。夜空を見上げたとき、あの暗がりのなかを、衛星と一緒にたくさんのごみが回っている——。そう知ると、「宇宙をきれいに保つ」という言葉が、少し自分ごとに感じられてくるかもしれません。

RODEN & SPACE

宇宙を、“遠い話”で終わらせない。

ローデンは、宇宙ミュージアム「ソラミル」の運営や、スペースポート高知への参画、宇宙食開発や「宇宙縁日」などのイベントを通じて、宇宙を身近なワクワクに変える取り組みを進めています。

このコラムでも、宇宙やロケット、そしてミライの話を、これからもやさしくお届けしていきます。