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Column ・ 宇宙のはなし

宇宙へは「エレベーター」で行く?
──ロケットのいらない宇宙旅行「宇宙エレベーター」入門

ボタンを押して、するすると宇宙へ。夢物語のようでいて、日本の建設会社が本気で2050年の実現をめざしています。

宇宙のはなし2026.07.06読了 約6分
📖 読み方を選べます。お子さまには こども版(ふりがな) がおすすめです。

ロケットは、大きな音とともに大量の燃料を燃やして飛び立ちます。でも、もし駅のホームに立つように宇宙船に乗り込み、ボタンひとつで「エレベーターで宇宙へ」行けるとしたら——。SFのようなこの乗りものが「宇宙エレベーター」です。しかも、これは空想で終わった話ではありません。日本の建設会社が、まじめに実現をめざしています。順番に見ていきましょう。

国際宇宙ステーションから見た地球の大気の層
宇宙から見た地球のふち。うすい大気の層のすぐ外は、もう宇宙です。画像:NASA
(とちゅう省略) カウンターウェイト(重り) 遠心力でケーブルをピンと張る ケーブル全長 約96,000km 静止軌道ステーション 高度 約36,000km 地球の自転と同じ速さで回る クライマー 電気の力でケーブルを昇る箱 アース・ポート(地上の発着点)
宇宙エレベーターの全体像。地上の「アース・ポート」から静止軌道ステーションを通り、先端の「カウンターウェイト(重り)」までケーブルが伸びます。その上を箱型の「クライマー」が昇り降りします。図:ローデン作成(大林組の構想にもとづくイメージ)

そもそも「宇宙エレベーター」って?

宇宙エレベーターは、地上と宇宙を1本のケーブルでつなぎ、その上を乗りものが昇り降りするという乗りものです。ロケットのように燃料を爆発させて飛ぶのではなく、「クライマー」と呼ばれる箱型の乗りものが、電気の力でケーブルをするすると登っていきます。イメージは、とほうもなく長い「天までのぼるエレベーター」。地上の発着点を「アース・ポート」、宇宙側の主要な駅を「静止軌道ステーション」と呼びます。

豆知識①

このアイデア、じつは100年以上前からあります。1895年、ロシアのツィオルコフスキーがパリのエッフェル塔を見て「天まで届く塔」を思いついたのが始まり。のちにSF作家アーサー・C・クラークが小説『楽園の泉』で描き、世界中に知られるようになりました。

なぜ、そんなに長くても倒れないの?

カギは「静止軌道(せいしきどう)」です。地球の自転とぴったり同じ速さでまわる高度約36,000kmのこの場所に物を置くと、地上から見て空の同じ位置に止まって見えます。天気予報の気象衛星などが、いつも同じ場所にいられるのもこのおかげです。

宇宙エレベーターは、この静止軌道よりさらに先までケーブルを伸ばし、その先端に「カウンターウェイト」という重りを付けます。すると、地球が回る力(遠心力)で重りが外へ引っぱられ、ケーブル全体がピンと張った状態になります。糸の先におもりを付けて、ぐるぐる振り回すと糸が張るのと同じ理屈です。大林組の構想では、ケーブルの全長は約96,000km地球から月までの距離の、およそ4分の1にもなります。

ケーブルは、何でできているの?

これがいちばんの難問です。もし鋼鉄(こうてつ)でこれほど長いケーブルを作ったら、自分自身の重さに耐えきれず、ちぎれてしまいますそこで期待されているのが、新しい素材「カーボンナノチューブ」。炭素でできた、髪の毛よりはるかに細い筒(つつ)で、ダイヤモンドに匹敵するほどの硬さを持つといわれます。直径わずか1cmの束で、1,200トン(大型トラック数百台ぶん)を吊り下げられるほどの強さです。

ただし、この素材を9万km以上もの長さで、均一に作るのは、今の技術ではまだ簡単ではありません。宇宙エレベーター実現の、最大の関門がここにあります。

豆知識②

日本の建設会社大林組は、2050年ごろの宇宙エレベーター実現をめざす構想を発表しています。カーボンナノチューブの耐久性を、国際宇宙ステーション(ISS)の日本実験棟「きぼう」で試す実験も進められています。SFが、少しずつ研究室の外へ出てきているのです。

ロケットと、何がちがうの?

いちばんの違いは「のぼり方」です。ロケットは、積んだ燃料の大半を「自分自身を持ち上げる」ために使ってしまいます。だから打ち上げには莫大なお金がかかり、一度きりで使い捨てになることも多いのです。

いっぽう宇宙エレベーターは、電気でゆっくり昇るだけ。うまくいけば、宇宙へ荷物や人を運ぶ費用を大幅に下げられる可能性があります。音も静かで、燃料を燃やさないぶん環境にもやさしい。もちろん良いことばかりではなく、静止軌道まで数日かかること、放射線の強い帯(ヴァン・アレン帯)を通ること、宇宙ゴミ(スペースデブリ)との衝突をどう防ぐか、など解決すべき課題もたくさん残っています。

ロケット 燃料を爆発させ一気に 打ち上げコストが高い 宇宙エレベーター 電気でゆっくり昇る 静か・低コストの可能性
ロケットは燃料を爆発させて一気に上がり、宇宙エレベーターは電気でゆっくり昇ります。運び方がまったく違うのです。図:ローデン作成(イメージ)
豆知識③

クライマーは、時速200kmほどで昇る構想です。新幹線くらいの速さでも、静止軌道までは1週間ほどの「宇宙の旅」窓の外で、地球がだんだん小さくなっていくのを眺めながらの旅になりそうです。

宇宙が「ご近所」になる日

宇宙エレベーターが実現すれば、宇宙へモノや人を運ぶコストが一気に下がります。すると、宇宙で太陽光発電をして地上へ電気を送る計画や、宇宙ホテル、月や火星をめざすための中継基地づくりまで、これまで「お金がかかりすぎて無理」とされてきた夢が、ぐっと現実味を帯びてきます。

夜空を見上げて、「あそこまでエレベーターで行けるんだ」と思える日が来るかもしれない。私たちは今、そんな未来へ向かうはじまりの時代を生きています。

RODEN & SPACE

宇宙を、“遠い話”で終わらせない。

ローデンは、宇宙ミュージアム「ソラミル」の運営や、スペースポート高知への参画、宇宙食開発や「宇宙縁日」などのイベントを通じて、宇宙を身近なワクワクに変える取り組みを進めています。

このコラムでも、宇宙やロケット、そしてミライの話を、これからもやさしくお届けしていきます。