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Column ・ 宇宙のはなし

42年間、日が沈まない。
──太陽系のはての「氷の巨人」、天王星と海王星のはなし

ほぼ横倒しのまま回る天王星では、極地方の昼が42年も続きます。その外側の海王星には、時速2100kmという太陽系最速の風。望遠鏡でしか会えない、いちばん遠いふたごの星のはなしです。

宇宙のはなし2026.09.22読了 約8分
📖 読み方を選べます。お子さまには こども版(ふりがな) がおすすめです。

このコラムでは、木星、土星、金星と、太陽系の星をひとつずつ訪ねてきました。今回向かうのは、ぐっと遠く——太陽系のいちばん外側にいる天王星と海王星です。ふたごのようによく似た大きさと色をしていながら、中身はどちらも「そんな星が本当にあるのか」と言いたくなるほど極端。しかも今週、9月26日に海王星が「衝(しょう)」をむかえます。1年でいちばん観測しやすい日です。

ガスでも岩でもない、「氷の巨人」

太陽系の惑星は、ふつう3つのグループに分けられます。岩でできた水星・金星・地球・火星は岩石惑星水素とヘリウムでふくらんだ木星土星巨大ガス惑星そして天王星と海王星は、そのどちらでもない第3のグループ——巨大氷惑星(アイス・ジャイアント)と呼ばれます。

ただ、この「氷」は、冷凍庫でつくる氷のことではありません。天文学でいう氷とは、水・アンモニア・メタンのこと。この3つが惑星の内部で、とてつもない圧力のもと、どろりとした高温の流体になって大部分を占めています。つまり「氷の巨人」の中身は、冷たくて固いどころか、何千度にもなる熱い海なのです。

天王星・海王星・地球を同じ縮尺で並べた図。天王星の直径は約5万1100kmで地球の約4.0倍、海王星は約4万9500kmで約3.9倍。天王星の1年は約84年、海王星は約165年。自転軸のかたむきは天王星が約98度、海王星が約28度。雲の上の温度は約マイナス195度とマイナス214度。衛星は29個と16個
天王星と海王星、そして地球を同じ縮尺でならべたところ。直径はどちらも地球の4倍ほどで、木星や土星よりはずっと小ぶりです。※イメージ図

おもしろいのは、大きいほうが軽いという逆転です。直径は天王星のほうが少し大きいのに、重さは海王星のほうが上。天王星が地球の約14.5倍、海王星が約17.1倍です。海王星のほうが、中身がぎゅっと詰まっているということになります。

色が青いのは、大気にふくまれるメタンのしわざです。メタンは太陽光のうち赤い成分をよく吸いこむので、残った青い光だけが返ってきて、私たちの目には青く見えます。天王星がやや緑がかった水色、海王星が深い青になるのは、大気にただよう霧の量のちがいだと考えられています。

豆知識①

太陽の光が地球に届くのは約8分20秒。これが天王星までだと約2時間40分海王星までは約4時間10分かかります。届く光の量も、海王星では地球の約900分の1。海王星から見た太陽は、まぶしい円盤ではなく「とびきり明るい星」くらいにしか見えません。

横倒しのまま、84年かけて一周する

天王星の最大の個性は、その姿勢です。地球の自転軸は約23.4度かたむいていて、そのおかげで四季が生まれています。ところが天王星の自転軸は、約98度90度を超えているので、ほとんど「転がっている」状態で太陽のまわりを回っているのです。

この姿勢のまま、天王星は約84年かけて公転します。すると何が起きるか。北極が太陽のほうを向いている期間は、北半球の高緯度でずっと太陽が沈まない。その長さ、およそ42年同じころ南極側は、42年間まるごと夜です。そして半周まわると、今度は立場がそっくり入れかわります。

天王星の自転軸は約98度かたむき、ほぼ横倒しで太陽のまわりを回る図。北極が太陽を向いている間は北極が約42年ずっと昼、南極は約42年ずっと夜。1周するのに約84年かかる。地球の自転軸のかたむきは約23.4度
横倒しのまま公転するため、極地方では昼と夜が42年ずつ続きます。日本で生まれた人が、一生のあいだに天王星の「朝」と「夕方」を一度ずつ見られるかどうか、という長さです。※イメージ図(軌道や大きさの比率は実際とは異なります)

なぜこんな姿勢になったのか。有力なのは、太陽系ができたばかりのころ、地球ほどの大きさの天体が横からぶつかって倒されたという説です。ただし決め手はまだありません。天王星の環(ほそい13本の環があります)や、おもな衛星たちも本体と同じように横倒しに並んでいるため、「倒れたときには衛星もすでにいたのでは」という難しい問題が残っているのです。

豆知識②

天王星は、望遠鏡で発見された最初の惑星です。1781年、イギリスのウィリアム・ハーシェルが自作の望遠鏡で見つけました。水星から土星までは、有史以前から肉眼で見えていた「昔からある星」。天王星の発見は、人類が知っていた太陽系の広さを、一夜にして2倍に広げた出来事でした。

太陽系でいちばん速い風が吹く星

いっぽう海王星の名物は、です。1989年にボイジャー2号が通過したとき観測された最大風速は、時速にして約2100km旅客機の巡航速度の2倍以上、音速もはるかに超えています。地球の台風が「時速200km級」であることを思えば、けたが一つちがう世界です。

不思議なのは、そのエネルギーがどこから来るのかです。海王星に届く太陽の光はごくわずか。ふつうに考えれば、大気はもっと静かなはずです。いまのところ、海王星が受け取る太陽エネルギーの倍以上の熱を内部から出していることが、この嵐を支えていると考えられています。ただし、その熱の出どころ自体がまだ完全には分かっていません。

ボイジャー2号は、地球がすっぽり入る大きさの暗い渦「大暗斑」も撮影しました。ところが数年後にハッブル宇宙望遠鏡が同じ場所を見ると、渦は跡形もなく消えていたのです。その後も別の場所に新しい暗斑が現れては消えています。数百年続く木星の大赤斑とは、まったく性格のちがう嵐です。

豆知識③

海王星は、計算によって先に存在が予言された惑星です。天王星の動きが理論とわずかにずれることから、「その外側にもう一つ惑星があるはずだ」と計算で位置を割り出し、望遠鏡をそこに向けたら本当にあった——1846年9月23日のことでした。ちなみに公転周期は約165年。発見から数えて最初の「1周年」を迎えたのは、ようやく2011年のことです。

衛星たちも、ひとくせある

衛星の数は、国立天文台の公表値で天王星が29個海王星が16個(2026年9月時点)。土星の292個や木星の115個に比べると控えめですが、遠すぎて見つけにくいだけで、観測が進めばまだ増えると見られています。

  • トリトン海王星最大の衛星。直径約2,700kmと月の8割ほどの大きさで、ただ一つ公転の向きが本体の自転と逆という異例の星です。もともと外からやってきた天体が捕まった、という説が有力。地表は約−235℃で、窒素を噴き上げる間欠泉が見つかっています。
  • ミランダ天王星の衛星。直径わずか470kmほどなのに、高さ約20kmという太陽系最大級の崖があります。地球の重力なら即死級ですが、ミランダの弱い重力では、飛び降りても底に着くのに10分ほどかかる計算になります。
  • タイタニア天王星最大の衛星で、直径約1,580km。表面には長さ1,500kmにおよぶ巨大な谷が刻まれており、かつて内部が凍って膨張し、地殻が裂けた跡だと考えられています。
  • ボイジャー2号衛星ではありませんが、この2つの惑星を訪れた探査機は、いまだにボイジャー2号のたった1機だけ天王星に1986年、海王星に1989年、それぞれ数日かけて通り過ぎただけです。私たちが持つ「近くで撮った写真」は、ほぼすべてこのときのものです。

2026年9月26日、海王星が「衝」

そして今週です。9月26日、海王星が衝をむかえます。衝とは、地球から見て太陽のちょうど反対側に惑星が来ること。日の入りごろに昇り、真夜中に南の空で最も高くなり、夜明けに沈む——ひと晩じゅう見られて、地球にいちばん近づく日です。

ただし正直にお伝えすると、海王星の明るさは7.8等肉眼で見える限界(6等前後)より暗く、双眼鏡か望遠鏡が必要です。しかも双眼鏡では、まわりの恒星と見分けがつかないただの青っぽい点にしか見えません。

2026年9月26日に海王星が衝をむかえる日の見つけ方の図。夜10時ごろ東南東から南東の空、うお座のあたりに0.4等の土星が見え、そのすぐ近くに7.8等の海王星がある。9月27日は満月がすぐ近くにあるため、9月末から10月初めのほうが見やすい。天王星の衝は11月25日、おうし座で5.6等
9月下旬の夜10時ごろ、東南東〜南東の空のイメージ。よく目立つ土星をまず見つけて、そのすぐ近くを双眼鏡でゆっくりなぞるのがコツです。※イメージ図(位置関係は日付・時刻・観察地によって変わります)

コツは、土星を目印にすることです。今年の海王星は、0.4等で明るく光る土星と同じうお座のあたりにいます。まず肉眼で土星を見つけ、そこから双眼鏡でゆっくり周囲をなぞっていく。星図アプリがあれば、ぐっと確実になります。

ひとつ注意を。9月27日は満月で、しかも土星のすぐそばに来ます。空が明るくなるぶん、7.8等の海王星にはかなり不利です。衝の前後にこだわらず、月が細くなる10月上旬を待ったほうが、じつは見つけやすいかもしれません。衝の日をはさんだ数週間は、どのみち条件はほとんど変わらないからです。

もう一方の天王星の衝は、11月25日おうし座で5.6等まで明るくなります。街の明かりから離れた、月のない澄んだ夜なら、目のいい人は肉眼でもぎりぎり見える明るさです。ハーシェルより前の誰も「惑星だ」と気づかなかった星を、自分の目で探してみる——秋から冬にかけての、ちょっと贅沢な宿題です。

太陽の光が4時間かけてようやく届く場所で、音速を超える風が吹き、42年ぶんの朝が明ける。そんな世界が、今夜の空のどこかに、本当に小さな点として写っています。

RODEN & SPACE

宇宙を、“遠い話”で終わらせない。

ローデンは、宇宙ミュージアム「ソラミル」の運営や、スペースポート高知への参画、スマホで月面を歩く月面歩行AR宇宙食開発や「宇宙縁日」などのイベントを通じて、宇宙を身近なワクワクに変える取り組みを進めています。

このコラムでも、宇宙やロケット、そしてミライの話を、これからやさしくお届けしていきます。