太陽系でいちばん有名な「かたち」は、たぶん土星のあの環でしょう。けれど土星のふしぎは、見た目だけではありません。地球が9個ならぶ巨体でありながら、水より軽い。環は差し渡し27万kmもあるのに、厚みはビルの高さほどしかない。知れば知るほど「そんなことある?」が続く星です。しかも今年は、10月4日に観測の絶好機を迎えます。
大きいのに、スカスカな星
土星の赤道直径は約12万500km。地球(約1万2700km)の、およそ9.4倍です。前回ご紹介した木星に次いで、太陽系で2番目に大きな惑星ということになります。
ところが重さは地球の約95倍。木星が約318倍だったことを思えば、大きさのわりにずいぶん軽い。この「大きさと重さのちぐはぐさ」を密度で表すと、土星は1立方センチあたり約0.7グラム。水(1グラム)より小さい数字です。つまり土星がまるごと入る巨大なプールがあったなら、土星は沈まずに浮いてしまう。太陽系の惑星でこんな星は、土星だけです。
土星と地球を、同じ縮尺でならべたところ。環までふくめた差し渡しは約27万kmで、地球が21個ならぶ幅になります。※イメージ図
軽い理由は中身です。土星もまた木星と同じく、ほとんどが水素とヘリウムのガスでできた惑星で、降りていっても足をつける地面はありません。そのうえ1日は約10時間33分という猛烈な速さで自転しているため、遠心力で赤道方向にぐんと膨らんでいます。望遠鏡で見ると、土星がはっきり「つぶれた円」に見えるのはそのためです。
いっぽう太陽のまわりを一周する「1年」は約29.5年。土星で1歳の誕生日を迎えるころ、地球では人生が三十年ぶんも進んでいる計算になります。
豆知識①
土星は太陽から約14億3000万km——地球〜太陽の距離の約9.6倍のところを回っています。太陽の光がここまで届くのに約80分。光の量は地球のおよそ90分の1しかなく、雲の上の温度は約−139℃です。土星から見た太陽は、ずいぶん小さくて弱い光の点に見えるはずです。
環は、広すぎるうえに薄すぎる
土星の環は、いちばん外側までふくめると差し渡し約27万km。地球を21個ならべても足りません。ところが、その厚みは場所によって数十メートルから数百メートルほどしかないのです。
どれくらい極端かというと、厚さ0.1mmのコピー用紙を、同じ薄さのまま差し渡し1kmほどまで広げたようなもの。紙どころか、もはやシャボン玉の膜のような比率です。じっさい真横から見る位置に地球が来ると、環はほとんど消えてしまいます。
環の広さと薄さのくらべ。正体は無数の氷のかけらで、砂つぶくらいのものから家ほどの大きさのものまで、それぞれが土星のまわりを回っています。※イメージ図(厚みは分かりやすいように誇張しています)
環は一枚の板ではなく、無数の氷のかけらの集まりです。ほとんどが水の氷で、ひとつぶひとつぶが、小さな衛星のように土星を回っています。遠くから見ると、その群れが「線」に見えているというわけです。
環をよく見ると、すき間が入っているのが分かります。いちばん有名なのがカッシーニの間隙(かんげき)で、幅は約4,700km。日本列島がすっぽり収まる幅の「みぞ」が、環のなかを一周しているのです。
豆知識②
土星の自転軸は約26.7度かたむいています。そのため地球から見た環の開き具合は、公転周期のちょうど半分にあたる約15年ごとに「まっすぐ横向き」になります。直近では2025年3月にそれが起こり、環がほとんど見えなくなりました。2026年はそこから少しずつ開きはじめたところ。今年の環は、まだ細い線のような姿です。いちばん大きく開くのは2032年ごろの見込みです。
北極には六角形、そして南極に十角形
土星の意外な名物が、北極にある六角形の雲のパターンです。差し渡しは約2万9000km——地球が2個入ってしまう大きさで、40年以上前から観測され続けています。自然にできた模様がこれほどきれいな六角形になる理由は、いまも完全には解明されていません。
そして2026年9月、この話に新しい章が加わりました。スペインのバスク大学などの研究チームが、土星の南極を取り囲む十角形のパターンを見つけたと発表したのです。研究チームはこれを「デカゴン」と呼んでいます。
見つかったのは南緯63度あたりのジェット気流の上。10個の頂点の間隔は、平均で約1万6800kmもあります。きっかけは、市民科学サイトに寄せられたアマチュア天文家の画像でした。そこから過去のハッブル宇宙望遠鏡の画像をさかのぼると、2023年にはすでに写っていたことも分かっています。北極の六角形のように長く続くのか、それとも数年で消える一時的なものなのか——答えはこれからの観測次第です。
豆知識③
土星の風は、赤道付近でおそろしく速く吹いています。デカゴンが乗っているジェット気流でさえ秒速約116m。日本の台風の最大風速がおおよそ秒速50〜60mですから、その倍ほどの流れが、止まることなく惑星を一周し続けていることになります。
衛星は、292個
土星は太陽系でいちばん多くの衛星を従える惑星です。2025年に128個がまとめて追加されて274個になり、さらに2026年春の18個の追加で292個に。木星の115個を大きく引き離しています。新しく見つかるのは直径数kmの小さなものばかりで、この数はまだ増えていきそうです。
- タイタン直径約5,150km。水星より大きく、太陽系で2番目に大きい衛星です。厚い大気を持ち、地表にはメタンの湖があり、メタンの雨が降ります。「地球によく似ていて、まったく似ていない」世界。
- エンケラドゥス直径約500km。南極の割れ目から、地下の海の水が宇宙へ噴き出しています。その一部は環の材料にもなっており、生命探しの有力候補のひとつです。
- ミマス直径約400km。片側に巨大なクレーターがあり、その姿がSF映画の宇宙要塞に似ていると話題になった衛星です。
- イアペトゥス片面が雪のように白く、もう片面が炭のように黒い、不思議な二色の衛星。公転の進行方向にあたる面に、暗い物質が降り積もっていると考えられています。
2026年9月〜10月、土星を見つけよう
いまが、まさに見ごろです。土星は0.4等前後——夜空でじゅうぶん目立つ明るさで、うお座のあたりにいます。まわりに明るい星が少ない領域なので、かえって見つけやすいのが今年の土星です。チカチカまたたかず、やわらかい黄色をした落ち着いた光を探してください。
9月なかばから下旬なら、夜8時ごろにはもう東〜東南東の空にのぼっていて、時間とともに高さを増していきます。そして10月4日は「衝(しょう)」。地球から見て太陽のちょうど反対側に土星が来る日で、日の入りごろに東から昇り、真夜中に南の空の高いところを通り、夜明けに西へ沈む——つまりひと晩じゅう見られる、1年でいちばんの好機です。
9月下旬の夜8時ごろ、東〜東南東の空のイメージ。9月27日には満月が土星のそばに並びます。小さな望遠鏡があれば、細い線のような環と、いちばん大きな衛星タイタンも見つけられます。※イメージ図(位置関係は日付・観察地によって変わります)
ねらい目の日もあります。9月27日の夕方から深夜にかけては、満月が土星のすぐそばに並びます。この2日前の9月25日は中秋の名月。お月見のついでに、その近くの黄色い星も探してみてください。10月24日にも、ふたたび月が土星に近づきます。
ひとつだけ正直にお伝えすると、環は肉眼や普通の双眼鏡では見えません。土星はあくまで「明るい点」です。けれど口径6cmほどの小さな望遠鏡があれば、細い線のような環がちゃんと見えてきます。科学館や公開天文台の観望会に足を運ぶのも、この時期ならではの楽しみ方です。
あの小さな黄色い光の正体は、地球が9個ならぶ大きさで、水より軽くて、紙より薄い環をまとった巨大な星。そう思って眺めると、秋の夜空が少し違って見えるかもしれません。
RODEN & SPACE
宇宙を、“遠い話”で終わらせない。
ローデンは、宇宙ミュージアム「ソラミル」の運営や、スペースポート高知への参画、スマホで月面を歩く月面歩行AR、宇宙食開発や「宇宙縁日」などのイベントを通じて、宇宙を身近なワクワクに変える取り組みを進めています。
このコラムでも、宇宙やロケット、そしてミライの話を、これからやさしくお届けしていきます。

星野館長やあ、ようこそ! 今日は、まあるい「わっか」をつけた星——「土星」のお話だよ。

キララしってる〜! 土星っていえば、あのわっかだよね!
大きいのに、とっても軽い
土星のはばは、地球の9個分くらい。とっても大きいよね。それなのに、土星は水よりも軽いんだ。もし宇宙にとってもとっても大きなおふろがあったら、土星はしずまないで、ぷかぷか浮いちゃうんだよ。
土星と地球を、おなじ大きさのものさしでならべたよ。わっかまでいれると、地球が21個ならぶはばだよ。※イメージ図

ソラくんええっ、星がおふろに浮くの!? すごい!

星野館長土星は、
ほとんどが「ガス」でできているからね。まえに話した木星とおなじで、おりても立てる地面がないんだ。
わっかは、びっくりするほど薄い
土星のわっかは、はしからはしまで約27万キロメートル。地球を21個ならべてもたりないくらい広いんだ。でもね、その厚さは数十メートルくらいしかないんだよ。コピー用紙を、おなじうすさのまま1キロメートルまで広げたみたいな感じ。
わっかは、とっても広くて、とっても薄いよ。そのしょうたいは、氷のかけらのあつまりなんだ。※イメージ図

モグリンわっかって、いたじゃないモグ!? こおりのつぶつぶが、いっぱいならんでるだけモグか〜!
てっぺんは六角形、そこは十角形
土星の北のはしっこには、くもでできた六角形のもようがあるんだ。大きさは、地球が2個はいるくらい! そして2026年9月、南のはしっこに十角形のもようが見つかったと発表されたばかりなんだよ。

星野館長しかもね、この発見のきっかけは、星ずきのふつうの人たちがとった写真だったんだ。すごいだろう?
おともの星が、292個
地球のおともの星は「月」ひとつだけ。でも土星には、292個もあるんだ。太陽系でいちばん多いんだよ。
- タイタン土星でいちばん大きいおともの星。水じゃなくて「メタン」の雨がふって、みずうみもあるよ。
- エンケラドゥス氷の星。下のほうから、水がふんすいみたいに宇宙へふき出しているんだ。
- ミマスおおきなまるいあなが1つ。えいがに出てくる宇宙船みたいな顔をしているよ。
- イアペトゥスはんぶんが真っ白で、はんぶんが真っ黒。ふしぎな2しょくの星だよ。

ピコ292個……木星よりずっと多いんだね……。
本物の土星を、見つけてみよう
いまがちょうど見ごろだよ。9月のおわりごろなら、夜8時ごろに東のひくい空でかがやいているよ。チカチカしない、やさしい黄色の光が目印。とくに9月27日は、まんまるの月がすぐそばにならぶんだ。
9月のおわりの夜8時ごろ、東の空を見てみてね。10月4日のころは、ひとばんじゅう見られるよ。※イメージ図

レンくんそうがんきょうだと、まだ「点」にしか見えないんだ。でも小さなぼうえんきょうがあれば、ほそい線みたいなわっかが見えるよ!

ソラくんじゃあ、科学館の星をみる会にいってみたいな! おうちの人にきいてみようっと。

星野館長いいね! 木星のつぎは土星。太陽系の星を、これからもひとつずつ見にいこう!
SPACE & FUN
宇宙を、もっと身近(みぢか)に。
宇宙ミュージアムや「宇宙縁日(うちゅうえんにち)」などのイベントで、宇宙のワクワクをみんなに届けています。このコラムに出てくるキャラクターたちも、ぜんぶオリジナルの企画なんだよ。