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Column ・ 宇宙のはなし

大きいのに、水より軽い。
──環をまとった惑星、土星のはなし

地球が9個ならぶ大きさ。それなのに、もし宇宙に巨大なプールがあれば、土星はぷかりと浮いてしまいます。そして自慢の環は、差し渡し27万km——なのに厚みは、たった数十メートル。

宇宙のはなし2026.09.08読了 約8分
📖 読み方を選べます。お子さまには こども版(ふりがな) がおすすめです。

太陽系でいちばん有名な「かたち」は、たぶん土星のあの環でしょう。けれど土星のふしぎは、見た目だけではありません。地球が9個ならぶ巨体でありながら、水より軽い環は差し渡し27万kmもあるのに、厚みはビルの高さほどしかない。知れば知るほど「そんなことある?」が続く星です。しかも今年は、10月4日に観測の絶好機を迎えます。

大きいのに、スカスカな星

土星の赤道直径は約12万500km地球(約1万2700km)の、およそ9.4倍です。前回ご紹介した木星に次いで、太陽系で2番目に大きな惑星ということになります。

ところが重さは地球の約95倍。木星が約318倍だったことを思えば、大きさのわりにずいぶん軽い。この「大きさと重さのちぐはぐさ」を密度で表すと、土星は1立方センチあたり約0.7グラム水(1グラム)より小さい数字です。つまり土星がまるごと入る巨大なプールがあったなら、土星は沈まずに浮いてしまう。太陽系の惑星でこんな星は、土星だけです。

土星と地球を同じ縮尺で並べた図。土星の赤道直径は約12万500kmで地球の約9.4倍、重さは約95倍、密度は水より軽く、1日は約10時間33分、1年は約29.5年、雲の上の温度は約マイナス139度、衛星は292個
土星と地球を、同じ縮尺でならべたところ。環までふくめた差し渡しは約27万kmで、地球が21個ならぶ幅になります。※イメージ図

軽い理由は中身です。土星もまた木星と同じく、ほとんどが水素とヘリウムのガスでできた惑星で、降りていっても足をつける地面はありません。そのうえ1日は約10時間33分という猛烈な速さで自転しているため、遠心力で赤道方向にぐんと膨らんでいます。望遠鏡で見ると、土星がはっきり「つぶれた円」に見えるのはそのためです。

いっぽう太陽のまわりを一周する「1年」は約29.5年土星で1歳の誕生日を迎えるころ、地球では人生が三十年ぶんも進んでいる計算になります。

豆知識①

土星は太陽から約14億3000万km——地球〜太陽の距離の約9.6倍のところを回っています。太陽の光がここまで届くのに約80分。光の量は地球のおよそ90分の1しかなく、雲の上の温度は約−139℃です。土星から見た太陽は、ずいぶん小さくて弱い光の点に見えるはずです。

環は、広すぎるうえに薄すぎる

土星の環は、いちばん外側までふくめると差し渡し約27万km地球を21個ならべても足りません。ところが、その厚みは場所によって数十メートルから数百メートルほどしかないのです。

どれくらい極端かというと、厚さ0.1mmのコピー用紙を、同じ薄さのまま差し渡し1kmほどまで広げたようなもの。紙どころか、もはやシャボン玉の膜のような比率です。じっさい真横から見る位置に地球が来ると、環はほとんど消えてしまいます。

土星の環のしくみを示した図。環の差し渡しは約27万kmで地球が21個ならぶ幅がありながら、厚みはうすいところで数十メートルしかない。環の正体はほとんどが水の氷で、砂つぶから家ほどの大きさのかけらが集まっている
環の広さと薄さのくらべ。正体は無数の氷のかけらで、砂つぶくらいのものから家ほどの大きさのものまで、それぞれが土星のまわりを回っています。※イメージ図(厚みは分かりやすいように誇張しています)

環は一枚の板ではなく、無数の氷のかけらの集まりです。ほとんどが水の氷で、ひとつぶひとつぶが、小さな衛星のように土星を回っています。遠くから見ると、その群れが「線」に見えているというわけです。

環をよく見ると、すき間が入っているのが分かります。いちばん有名なのがカッシーニの間隙(かんげき)で、幅は約4,700km。日本列島がすっぽり収まる幅の「みぞ」が、環のなかを一周しているのです。

豆知識②

土星の自転軸は約26.7度かたむいています。そのため地球から見た環の開き具合は、公転周期のちょうど半分にあたる約15年ごとに「まっすぐ横向き」になります。直近では2025年3月にそれが起こり、環がほとんど見えなくなりました。2026年はそこから少しずつ開きはじめたところ。今年の環は、まだ細い線のような姿です。いちばん大きく開くのは2032年ごろの見込みです。

北極には六角形、そして南極に十角形

土星の意外な名物が、北極にある六角形の雲のパターンです。差し渡しは約2万9000km——地球が2個入ってしまう大きさで、40年以上前から観測され続けています。自然にできた模様がこれほどきれいな六角形になる理由は、いまも完全には解明されていません。

そして2026年9月この話に新しい章が加わりました。スペインのバスク大学などの研究チームが、土星の南極を取り囲む十角形のパターンを見つけたと発表したのです。研究チームはこれを「デカゴン」と呼んでいます。

見つかったのは南緯63度あたりのジェット気流の上。10個の頂点の間隔は、平均で約1万6800kmもあります。きっかけは、市民科学サイトに寄せられたアマチュア天文家の画像でした。そこから過去のハッブル宇宙望遠鏡の画像をさかのぼると、2023年にはすでに写っていたことも分かっています。北極の六角形のように長く続くのか、それとも数年で消える一時的なものなのか——答えはこれからの観測次第です。

豆知識③

土星の風は、赤道付近でおそろしく速く吹いています。デカゴンが乗っているジェット気流でさえ秒速約116m日本の台風の最大風速がおおよそ秒速50〜60mですから、その倍ほどの流れが、止まることなく惑星を一周し続けていることになります。

衛星は、292個

土星は太陽系でいちばん多くの衛星を従える惑星です。2025年に128個がまとめて追加されて274個になり、さらに2026年春の18個の追加で292個に。木星の115個を大きく引き離しています。新しく見つかるのは直径数kmの小さなものばかりで、この数はまだ増えていきそうです。

  • タイタン直径約5,150km。水星より大きく、太陽系で2番目に大きい衛星です。厚い大気を持ち、地表にはメタンの湖があり、メタンの雨が降ります。「地球によく似ていて、まったく似ていない」世界。
  • エンケラドゥス直径約500km。南極の割れ目から、地下の海の水が宇宙へ噴き出しています。その一部は環の材料にもなっており、生命探しの有力候補のひとつです。
  • ミマス直径約400km。片側に巨大なクレーターがあり、その姿がSF映画の宇宙要塞に似ていると話題になった衛星です。
  • イアペトゥス片面が雪のように白く、もう片面が炭のように黒い、不思議な二色の衛星。公転の進行方向にあたる面に、暗い物質が降り積もっていると考えられています。

2026年9月〜10月、土星を見つけよう

いまが、まさに見ごろです。土星は0.4等前後——夜空でじゅうぶん目立つ明るさで、うお座のあたりにいます。まわりに明るい星が少ない領域なので、かえって見つけやすいのが今年の土星です。チカチカまたたかず、やわらかい黄色をした落ち着いた光を探してください。

9月なかばから下旬なら、夜8時ごろにはもう東〜東南東の空にのぼっていて、時間とともに高さを増していきます。そして10月4日は「衝(しょう)」地球から見て太陽のちょうど反対側に土星が来る日で、日の入りごろに東から昇り、真夜中に南の空の高いところを通り、夜明けに西へ沈む——つまりひと晩じゅう見られる1年でいちばんの好機です。

2026年9月下旬から10月にかけての土星の見つけ方の図。夜8時ごろ東から東南東の低い空に0.4等の土星がのぼり、9月27日には満月が並ぶ。10月4日の衝の前後は一晩中見え、小さな望遠鏡ではうすく開いた環と衛星タイタンが見える
9月下旬の夜8時ごろ、東〜東南東の空のイメージ。9月27日には満月が土星のそばに並びます。小さな望遠鏡があれば、細い線のような環と、いちばん大きな衛星タイタンも見つけられます。※イメージ図(位置関係は日付・観察地によって変わります)

ねらい目の日もあります。9月27日の夕方から深夜にかけては、満月が土星のすぐそばに並びます。この2日前の9月25日は中秋の名月お月見のついでに、その近くの黄色い星も探してみてください。10月24日にも、ふたたび月が土星に近づきます。

ひとつだけ正直にお伝えすると、環は肉眼や普通の双眼鏡では見えません。土星はあくまで「明るい点」です。けれど口径6cmほどの小さな望遠鏡があれば、細い線のような環がちゃんと見えてきます。科学館や公開天文台の観望会に足を運ぶのも、この時期ならではの楽しみ方です。

あの小さな黄色い光の正体は、地球が9個ならぶ大きさで、水より軽くて、紙より薄い環をまとった巨大な星。そう思って眺めると、秋の夜空が少し違って見えるかもしれません。

RODEN & SPACE

宇宙を、“遠い話”で終わらせない。

ローデンは、宇宙ミュージアム「ソラミル」の運営や、スペースポート高知への参画、スマホで月面を歩く月面歩行AR宇宙食開発や「宇宙縁日」などのイベントを通じて、宇宙を身近なワクワクに変える取り組みを進めています。

このコラムでも、宇宙やロケット、そしてミライの話を、これからやさしくお届けしていきます。