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Column ・ 宇宙のはなし

8分20秒前の光で、朝が来る。
──いちばん身近な星、太陽のはなし

毎朝のぼって、夕方には沈む。あたりまえすぎて、ふだんは気にもとめない太陽。けれどその正体は、地球が109個ならぶほど大きく、中心が1,600万℃に燃える星です。太陽系めぐりの折り返しに、すべての中心にある星をたずねます。

宇宙のはなし2026.10.05読了 約9分
📖 読み方を選べます。お子さまには こども版(ふりがな) がおすすめです。

10月8日は二十四節気の「寒露」。朝晩の空気がひんやりして、夕暮れの早さに気づく季節です。東京の日の入りは、10月1日の17時26分から、31日には16時47分へ。たった1か月で約40分も早くなります。このコラムの太陽系めぐりは、前回の冥王星で外のはてまで行きました。今回は折り返して、すべての中心にある星——太陽のはなしです。毎日見ているのに、じつはよく知らない星かもしれません。

太陽は、地球109個分のはば

太陽の直径は約139万km。地球の約109倍です。地球を横に109個ならべて、やっと太陽の端から端に届きます。体積でいえば、地球が約130万個入る大きさです。

身近なもので考えてみましょう。地球を1円玉(直径2cm)とすると、太陽は直径約2.2mの大玉。天井に届きそうな球です。そして1円玉の地球は、そこから約235m離れたところを回っています。太陽系は、思っている以上にがらんとした空間なのです。

太陽と8つの惑星を同じ縮尺でくらべた図。太陽の直径は約139万kmで地球の約109倍。いちばん大きな木星でも太陽の約10分の1で、地球は小さな点ほどの大きさ
太陽と8つの惑星を、同じ縮尺でならべたところ。画面の左にあるのは、太陽のほんの一部です。※イメージ図(惑星どうしの距離は縮めています)

重さはさらに桁ちがいで、地球の約33万倍。太陽系にあるすべてのもの——惑星も衛星も小惑星も——の重さを足しても、その99.8%以上を太陽ひとつが占めています。木星のような巨大な惑星でさえ、太陽から見れば“残りの0.2%”のなかの一員です。惑星たちが太陽のまわりを回り続けているのは、この圧倒的な重さに引かれているからです。

豆知識①

太陽も、夜空に光る星と同じ仲間です。自分で光を出す星を「恒星」といい、私たちの天の川銀河には恒星が数千億個あるといわれます。太陽はその中で、大きさも明るさもごく平均的な星。たまたま近くにあるので、昼の空をまぶしく照らしているだけなのです。

目に届くのは、8分20秒前の光

地球から太陽までは、平均で約1億5,000万km。時速900kmの旅客機で休まず飛び続けても約19年、時速100kmの車なら約170年かかる距離です。

光の速さでも、およそ8分20秒。つまり、いま見ている太陽は「8分20秒前の太陽」です。朝、カーテンを開けて浴びる光は、あなたが目覚ましを止めたころに太陽を出発した光、ということになります。

太陽の光を受ける地球。昼と夜は、地球が回りながら太陽の光の当たる側と当たらない側を行き来することで生まれます。※イメージ映像

中をのぞくと、1,600万℃の“炉”

太陽は、燃える岩のかたまりではありません。ほとんどが水素とヘリウムのガスでできた、巨大なガスの球です。その中心部の温度は約1,600万℃。あまりの高温と圧力で水素どうしがくっつき、ヘリウムに変わる「核融合」が起きています。このとき生まれるエネルギーが、太陽の光と熱の正体です。

太陽の内部の断面図。中心核は約1,600万℃で核融合が起きている。そのまわりに放射層、対流層があり、表面の光球は約5,500℃。黒点は約4,000℃。外側の大気コロナは100万℃以上。表面からプロミネンスが立ちのぼる
太陽を4分の1だけ切り取って、中をのぞいたところ。中心でつくられたエネルギーは、放射層・対流層を通って表面へ運ばれます。※イメージ図(各層の厚さは目安です)

中心で生まれた光は、すぐには外に出られません。ぎっしり詰まったガスにぶつかっては向きを変え、行ったり来たりをくり返しながら、ゆっくりと表面をめざします。表面にたどり着くまでにかかる時間は、数万年以上とも考えられています。表面からはたった8分20秒で地球に届くのに、太陽の中を抜けるのに何万年。今日の日ざしは、人類がまだ洞窟で暮らしていたころに生まれたエネルギーかもしれません。

ふしぎなこともあります。私たちが見ている表面(光球)は約5,500℃なのに、その外側に広がるうすい大気「コロナ」は100万℃以上。熱源から離れるほど熱くなる、という逆転現象です。なぜそうなるのかは、いまも研究が続く大きななぞの一つです。

  • 直径約139万km(地球の約109倍)
  • 重さ地球の約33万倍(太陽系全体の99.8%以上)
  • 表面温度約5,500℃。黒点は約4,000℃、中心は約1,600万℃
  • 自転赤道付近で約25日、北極・南極付近では30日以上。ガスの球なので、場所によって回る速さがちがいます
  • 年齢約46億年。人間でいえば、ちょうど働きざかり
  • 距離地球から平均約1億5,000万km。光で約8分20秒
豆知識②

太陽は核融合で光るたびに、重さの一部をエネルギーに変えています。その量は1秒間に約400万トン。それでも太陽はとても重いので、46億年かけて失った重さは、全体のわずか0.03%ほど。太陽はあと約50億年、いまと同じように輝き続けると考えられています。

黒点と、11年のリズム

太陽の表面には、ときどき黒いしみのような「黒点」があらわれます。黒点はまわりより1,500℃ほど温度が低い(約4,000℃)ため、相対的に暗く見える場所。強い磁場が熱の湧き上がりをおさえている部分です。大きいものは地球がすっぽり入るほどになります。

黒点の数は、約11年の周期で増えたり減ったりしています。今の周期は2024年に活動のピーク(極大)を迎え、いまはゆるやかに下り坂。ただ、大きな爆発「フレア」や磁気嵐は極大の1〜3年後にも起きやすく、まだまだ油断はできません。

2024年5月には、太陽で起きた大きな爆発の影響で、北海道をはじめ日本の各地で赤いオーロラが観測されました。太陽の活動は、美しいオーロラを生む一方で、GPSや通信、人工衛星にも影響を与えます。いま世界中で、天気予報のように太陽の様子を見張る「宇宙天気予報」が行われています。

季節で変わる、太陽の通り道

太陽は、毎日同じ道を通っているわけではありません。地球の軸が約23.4度かたむいたまま太陽のまわりを回っているので、季節によって昇る方角と高さが変わります。東京の場合、正午ごろのいちばん高いところ(南中高度)は、夏至で約78度、冬至では約31度。冬の影が長いのは、太陽が低いところを通るからです。

東京で見た季節ごとの太陽の通り道。夏至は東北東から昇り南中高度は約78度、春分・秋分は真東から昇り約54度、10月上旬は約50度、冬至は東南東から昇り約31度
東京で見た、季節ごとの太陽の通り道。10月は1日ごとに少しずつ、低く短い道に変わっていきます。※イメージ図

いまの季節の太陽は、秋分(9月23日)を過ぎて、冬至の道へ向かっている途中です。10月1日に約51度だった南中高度は、31日には約40度へ。1か月で約11度も低くなります。朝日が昇る方角も、真東から少しずつ南へずれていきます。同じ窓から毎朝の日の出を見ていると、その移動がはっきりわかるはずです。部屋の奥まで日ざしが届きはじめたら、それは太陽の道が低くなったしるしです。

豆知識③(大切な注意)

太陽は絶対に直接見ないでください。サングラスや下じき、スマホの画面越しでも目をいためます。観察するなら、木もれ日や、厚紙に開けた小さな穴を通して地面に映す「ピンホール」で、影の形を見るのが安全です。ちなみに日本で次に日食が見られるのは、2030年6月1日(北海道では金環日食)。その次は2035年9月2日、北陸から北関東で皆既日食が見られます。

太陽の一生と、これから

  • 約46億年前ガスとちりの雲がちぢんで、太陽が生まれる。残った材料から、地球や惑星たちができました。
  • いま水素を燃料に、安定して輝く「働きざかり」。寿命のほぼ半分のところにいます。
  • 約10億年後少しずつ明るさが増し、地球は今よりずっと暑くなると考えられています。
  • 約50億年後中心の水素を使いきり、大きくふくらんだ赤色巨星に。水星や金星はのみこまれると予想されています。
  • そのあと外側のガスを宇宙へ放ち、地球ほどの大きさの白く小さな星「白色矮星」になって、ゆっくり冷えていきます。

気の遠くなるような未来の話ですが、今日も明日も、太陽はいつもの場所から昇ります。次回の太陽系めぐりは、その太陽にいちばん近い惑星「水星」へ。11月の明け方、めずらしく見やすくなる“かくれんぼの星”のはなしです。

秋の夕方、西の空を染める夕日を、少しだけ立ち止まってながめてみてください。それは8分20秒前に出発し、そのずっと前、何万年もかけて太陽の中を旅してきた光です。

RODEN & SPACE

宇宙を、“遠い話”で終わらせない。

ローデンは、宇宙ミュージアム「ソラミル」の運営や、スペースポート高知への参画、スマホで月面を歩く月面歩行AR、宇宙食開発や「宇宙縁日」などのイベントを通じて、宇宙を身近なワクワクに変える取り組みを進めています。

このコラムでも、宇宙やロケット、そしてミライの話を、これからやさしくお届けしていきます。