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Column ・ 宇宙のはなし

降りていっても、地面がない星。
──太陽系でいちばん大きな惑星、木星のはなし

地球が11個ならぶ大きさ。それなのに1日はたった10時間。地球がまるごと入る嵐が、何百年も止まらずに回り続けている——木星は、私たちの常識がほとんど通じない星です。

宇宙のはなし2026.09.01読了 約7分
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もしも木星に宇宙船で降りていったら、どうなるでしょう。雲を抜け、さらに下へ。けれど、いつまで待っても着陸する瞬間は訪れません。木星には、立てる地面が存在しないのです。太陽系でいちばん大きなこの惑星は、私たちが「星」と聞いて思い浮かべる姿とは、ずいぶん違う顔をしています。

まず、大きさがけたはずれ

木星の赤道直径は約14万3000km地球(約1万2700km)の、およそ11倍です。横に地球を11個ならべて、ようやく直径がおなじになる計算。重さにいたっては地球の約318倍で、太陽系にあるほかの惑星を全部合わせても、木星ひとつには届きません。

木星と地球を同じ縮尺で並べた図。木星の赤道直径は約14万3000kmで地球の約11倍、重さは約318倍、1日は約9時間56分、1年は約11.9年、雲の上の温度は約マイナス145度
木星と地球を、同じ縮尺でならべたところ。左下の赤い渦「大赤斑」だけでも、地球がまるごと入ってしまいます。※イメージ図

ところが、これだけ大きいのに1日はたった約9時間56分太陽系の惑星でいちばん速い自転です。あの巨体が10時間足らずで一回転しているため、木星は遠心力でやや横に膨らみ、望遠鏡で見るとほんの少しつぶれた形をしています。いっぽう太陽のまわりを一周する「1年」は約11.9年木星で1歳の子は、地球でいえばもう中学生です。

豆知識①

木星は太陽から約7億8000万km——地球〜太陽の距離の約5.2倍のところを回っています。太陽の光がここまで届くのに約43分。光の量は地球のおよそ27分の1しかなく、雲の上の温度は約−145℃という寒さです。

「地面がない」とは、どういうことか

木星は、そのほとんどが水素とヘリウムでできています。成分だけを見れば太陽とよく似ていて、「もう少し重ければ星として燃えていたかもしれない」とも言われる天体です。

下へ降りていくと、まわりの気体は少しずつ濃く、重くなっていきます。けれど、どこかで「ここから固い地面」という境目が現れることはありません。気体がだんだん液体のようになり、やがて金属のようにふるまう——変化はどこまでもなめらかで、足をつける場所はどこにもないのです。

木星の内部の断面イメージ図。外側から雲の層、水素ガスの層、液体の水素、金属水素の層、中心の核と続き、固い地面はどこにもない
木星の内部のイメージ。外側の雲から中心へ向かって、まわりが少しずつ濃くなっていくだけで、着陸できる「地面」はどこにも現れません。※イメージ図(層の厚さの比率は実際とは異なります)

深いところにあると考えられているのが金属水素の層。途方もない圧力で水素が金属のような性質を持ち、電気を通すようになった状態です。これが猛烈な自転とあいまって、木星に太陽系最大級の磁場を生み出していると考えられています。その磁場に捕らえられた粒子が極で光り、地球のオーロラよりはるかに巨大なオーロラを描いています。

400年間、止まらない嵐

木星の顔で最も有名なのが、赤茶色の渦——大赤斑(だいせきはん)です。これは巨大な高気圧性の嵐で、少なくとも190年以上望遠鏡で観測され続けてきました。17世紀の記録にある斑点と同じものだとすれば、350年以上ずっと吹き荒れていることになります。

ただし、この嵐は少しずつ小さくなっています。1800年代には地球3個分の幅があったとされますが、近年の観測では幅およそ1万6000kmまで縮み、ちょうど地球がひとつすっぽり入るくらい。かつての細長い楕円から、まるみを帯びた形へと姿を変えつつあります。なぜ縮んでいるのか、はっきりした答えはまだ出ていません。

豆知識②

木星のしま模様は、アンモニアなどでできた雲の帯です。明るい帯と暗い帯は、それぞれ逆向きの風が吹く「風の道」。その速さは場所によって秒速100mを超えることがあります。台風の最大風速がおおよそ秒速50〜60mですから、その倍ほどの風が、地球何個分もの幅でずっと流れ続けているわけです。

衛星は、いま115個

木星は、まるで小さな太陽系のように多くの衛星を従えています。国際天文学連合(IAU)に登録された数は2026年8月時点で115個観測技術の進歩で小さな衛星が次々と見つかっており、この数字はこれからも増えていきそうです。

なかでも特別なのが、1610年にガリレオ・ガリレイが発見した4つ、いわゆるガリレオ衛星です。「すべてが地球のまわりを回っている」と信じられていた時代に、地球以外の星を回る天体が見つかった——この発見が、世界の見え方を変えました。

  • イオ太陽系でもっとも火山活動が活発な天体。木星の引力に絶えずもみくちゃにされて内部が熱くなり、いまも噴火を繰り返しています。
  • エウロパ表面は一面の氷。その下に、地球の海より多いかもしれない液体の水の海があると考えられ、生命探しの最有力候補とされています。
  • ガニメデ直径約5,260km。太陽系最大の衛星で、惑星である水星よりも大きい天体です。衛星なのに自前の磁場を持っています。
  • カリスト4つのうち最も外側。太陽系でもっともクレーターに覆われた天体のひとつで、大昔の姿をほぼそのまま保っています。

ちなみに木星にも環(リング)があります。人工衛星の話でも触れたように、宇宙では小さなちりも高速で飛び交っています。木星の環は、衛星に隕石が衝突したときに舞い上がったちりが集まったものと考えられていて、土星のように目立たない、とても薄く暗い環です。

2026年9月、木星を見つけよう

木星はマイナス2等前後にもなる、夜空でとても目立つ星です。またたかず、どっしりと落ち着いた黄色っぽい光を放つのが目印。2026年9月は明け方の東の低い空にいます。9月中旬なら午前2時半ごろに昇り、日の出1時間ほど前の午前4時20分ごろ、東の空のやや低いところで見つけられます。

2026年9月9日明け方の東の低い空に見える木星と細い月のイメージ図。双眼鏡ではガリレオ衛星のイオ、エウロパ、ガニメデ、カリストが点のように並んで見える
9月9日の明け方、木星のそばに細い月がならびます。間隔は満月2〜3個分ほど。双眼鏡があれば、木星の両わきに小さな点——ガリレオ衛星がならんでいるのが分かります。※イメージ図(位置関係は日付・観察地によって変わります)
豆知識③

9月9日の未明から明け方は、細い月が木星のすぐそばに寄ります。間隔は満月2〜3個分ほど。低い空なので、東側がひらけた場所を選ぶのがコツです。ガリレオ衛星は手持ちの双眼鏡でも点として見えるので、望遠鏡がなくても大丈夫。並び方は数時間で変わるので、翌朝もう一度見ると、位置が入れかわっていることに気づけます。

赤い火星が「行ってみたい星」だとすれば、木星は「行っても降りられない星」。同じ太陽系の惑星なのに、これほど性格が違うというのも、おもしろいところです。今度の明け方、東の空にひときわ明るい星を見つけたら、それはたぶん木星。あの光の向こうで、地球サイズの嵐がいまも回り続けています。

RODEN & SPACE

宇宙を、“遠い話”で終わらせない。

ローデンは、宇宙ミュージアム「ソラミル」の運営や、スペースポート高知への参画、スマホで月面を歩く月面歩行AR宇宙食開発や「宇宙縁日」などのイベントを通じて、宇宙を身近なワクワクに変える取り組みを進めています。

このコラムでも、宇宙やロケット、そしてミライの話を、これからやさしくお届けしていきます。